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ネットワーク工程表とは?種類・書き方・利用法をわかりやすく紹介【実例あり】

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編集者: Edraw

工事やプロジェクトの工程表として一般にもよく知られているのは「ガントチャート」ではないでしょうか。

一方、建築関係者以外があまり目にすることはなくても施工管理ではおなじみの工程表が、プロジェクト内の工程同士の関連性がわかる「ネットワーク工程表」です。

本記事ではネットワーク工程表の特徴や見方、書き方について紹介します。

関連記事:QC工程表とは?基礎知識と作り方を紹介

1.ネットワーク工程表とは?

まずは、ネットワーク工程表の概要と使用される専門用語についてわかりやすく解説します。

1.1ネットワーク工程表の定義と特徴

ネットワーク工程表は、建築工事・土木工事・管工事・電気工事など、建設現場全般において使用されている工程表のひとつです。

ネットワーク工程表 サンプル

(引用:日本工学院 テクノロジーカレッジ)

工程表にはネットワーク工程表以外に以下の3つの種類があります。

1.バーチャート工程表:横軸に作業に必要な日数、縦軸に作業項目をとることで、作業計画全体を分かりやすく示した一般的に使用される工程表

バーチャート工程表


(引用:佐世保市 施行計画書作成の手引き)

2.ガントチャート:バーチャートの横軸が日程なのに対し、進捗率を横軸にとった工程表
 

ガントチャート

3.曲線(グラフ)式工程表:横軸に日程、縦軸に進捗率をとるバーチャートとガントチャート両方の性質を持つ工程表
 曲線(グラフ)式工程表

(引用:佐世保市 施行計画書作成の手引き(営繕工事編))

これら3つの表はそれぞれの用途により使い分けますが、いずれも工程間の関係は読み取れません。

プロジェクト管理において、複数の工程が並行する際には「CとDの工程はBの工程が終わったらおこなわれる」「HのタスクはF・Gの工程が両方終わらないと開始できない」など、タスク同士に依存関係が発生するケースがあります。

ネットワーク工程表はこの「全体的な工程の流れと各工程同士の関連性」を視覚的に表現するための表です。

1.2 専門用語と記号

実際にネットワーク工程表を作成する前に、使用する用語や記号を覚えておくと見方がわかります。専門用語と記号

(ネットワーク工程表(EdrawMaxで作成))

以下がネットワーク工程表作成に関連する専門用語を表にまとめたものです。

専門用語 説明
イベント(結合点)

プロジェクト内の特定の時点を示す点

中に数字が書かれた○印で表現され、左から右になるにつれて番号が大きくなる

アクティビティー(作業)     プロジェクト内の個別な作業やタスクを示すもの
関連性のあるイベントとイベントをつなぐ矢印(→)で表現され、矢印の上に工程、下に所要日数を記載する
ダミー 作業の順序に関する制約を示すために使用される仮想的な流れ
所要時間がゼロで、点線で表す
最早開始(結合点)時刻 イベントやアクティビティーが最も早く開始可能な時刻
最早終了(結合点)時刻 イベントやアクティビティーが最も早く終了可能な時刻
最遅開始(結合点)時刻 プロジェクトの工期に遅れが発生しないためには、アクティビティーを遅くともそこまでに始まる必要がある時刻
最遅終了(結合点)時刻 プロジェクトの工期に遅れが発生しないためには、アクティビティーを遅くともそこまでに修了する必要がある時刻
クリティカルパス プロジェクトの中で最も重要な経路で、遅れが許容されない経路のこと
クリティカルパス上のアクティビティーが遅れると、プロジェクト全体の工期が延びる
トータルフロート アクティビティーが遅れてもプロジェクト全体の工期に影響を与えない最大の余裕日数のこと
フリーフロート アクティビティーが遅れても、次のアクティビティーに影響を与えない余裕日数のこと

 これらの用語を理解しておくと、ネットワーク工程表の作成や分析がより効果的におこなえるようになります。

2.ネットワーク工程表の書き方とルール

実際に書き方とルールを解説しながら、冒頭の解説で使用した以下のネットワーク工程表を「EdrawMax」で作成します。

EdrawMaxは世界中で累計3,500万以上ダウンロードされているEdrawシリーズのドローイングソフトで、わかりやすい操作と豊富な作図種類が特徴です。プロジェクト管理においても「ガントチャート」「フローチャート」「プロジェクトカレンダー」など豊富なテンプレートが用意されています。

今回は新規で一から作成する方法と、テンプレートを利用して作成する方法の2通り紹介します。

作成方法①:新規で作成

まずは「新規作成」画面から「ブロック図」を選択します。

新規作成

作成画面が表示されたら、最初にイベントの〇を作成しましょう。

画面左側の「ライブラリ」にある「丸」をドラッグ&ドロップします。大きさは図形を選択すると現れるハンドルで、色や線はフローティングツールバーで変更できます。Ofiiceソフトの図形描画機能と同じ操作感で使用できるため、パソコンに慣れている人なら簡単に操作可能です。

「丸」をドラッグ&ドロップ

今回は色を変更せず、線を太くして中に数字を入れます。文字は図形のダブルクリックで入力可能です。

次に、作成したイベント(〇)を右側にコピーし、中のイベント番号を作業の進行に合わせて数字を大きくなるように変更します。Shiftキー+Ctrlキーを押すと水平/垂直方向にコピーできるため効率的です。

 コピー

イベント部分のコピーができたら、次にアクティビティーの矢印を作成します。

アクティビティーの矢印を作成

作図に特化したEdrawMaxなら、矢印を引くのも簡単です。矢印を引きたいところをポイントし、青い丸が出たらつなげたいイベントまでドラッグするだけです。ドラッグの方向を変えれば、同様に直角に曲がった矢印も楽に作成できます。

矢印を引く

必要な矢印を全て作成し終わりました。EdrawMaxでは図形に合わせて線や矢印は自動的につながるので、位置合わせのストレスもなくきれいな作図が可能です。

この図でいうとイベント⑤は④の完了後(依存関係)になるため、点線のダミー線でイベント間をつなぎます。

アクティビティーの矢印部分ができたので、上に作業番号、下に作業日数を記入します。文字は枠と塗りつぶしの色を「なし」にした長方形に入力したものを一つ作り、イベントと同様にコピーすると効率的です。

ネットワーク工程表が完成

これでネットワーク工程表が完成しました。

せっかく完成した工程表ですので、個人用のテンプレートとして保存して、次回の作成で活用することができます。

左上のホームボタンをクリックします。

個人用のテンプレートとして保存

「名前を付けて保存」>「個人テンプレート」をクリックして、「ローカル」か「クラウド」を選択して「OK」をクリップすればOKです。

個人用のテンプレートとして保存

次回、作成する時、「テンプレートを使って新規作成」を選んで、「個人テンプレート」で保存されたテンプレートを見つけることができます。

作成方法②:テンプレートを利用して作成

EdrawMaxには①公式テンプレート②ユーザーが作成・公開したテンプレートの2種類があり、どちらも編集可能です。

例えばネットワーク工程表なら、下の「Basic PERT Chart」のテンプレートをベースに図形の追加・削除・移動で効率的に作成することもできます。

Basic PERT Chart

EdrawMaxにはスマートレイアウト機能があり、図形を動かすと矢印も合わせて移動するため図の変更も簡単です。

スマートレイアウト機能

文字を変更し、完成です。

3.ネットワーク工程表の利用法

ネットワーク工程表には、以下の6つの利用法があります。

利用法 説明
スケジュールの策定 プロジェクト内の活動やタスクの依存関係を明確にすることで、スケジュール全体を効果的に策定し総工期を計画できる
クリティカルパスの特定   プロジェクトのクリティカルパスを特定し、遅延防止や工期短縮に役立てる
リソースの配分 各アクティビティーの開始時刻や終了時刻の把握により、リソースの適切な配分が可能になりプロジェクトの円滑な進行とコスト削減に役立つ
進捗モニタリング プロジェクトの進捗と計画のズレをモニタリングし、ずれがあった場合には迅速に調整ができる
変更管理 プロジェクトに追加・変更が生じた場合、影響を把握しリスクを最小限に抑える
リスク管理 クリティカルパスの特定やトータルフロートの計算を通じてプロジェクトのリスク要因を事前に把握し、適切な対策を講じる

ネットワーク工程表は、計画の策定から実行、モニタリング、変更管理までの各段階で活用できるプロジェクト管理において非常に重要なツールです。

4.ネットワーク工程表のメリットとデメリット

ネットワーク工程表を使用するメリットは以下の4つです。

1.可視性と理解度の向上
プロジェクトの構造を視覚的に表現するため、参加者全体がプロジェクトの全体像を理解しやすくなる

2.依存関係の明確化
各作業の順序や結びつきが理解しやすくなり、適切に処理できる

3.クリティカルパスの特定
クリティカルパスの特定に役立ち、プロジェクト全体の最短工期・優先順位がわかる

4.スケジュール管理の効果化
作業の進捗やプロジェクトの完了予測がリアルタイムでおこなえるため、適切な調整やリソースの最適な配分が可能になる

一方、ネットワーク工程表を使用するデメリットは以下の3つです。

1.複雑で作成が大変
大規模で複雑なプロジェクトの場合、ネットワーク工程表の作成・変更に手間がかかり、管理が複雑になる

2.専門知識が必要
ネットワーク工程表を理解し作成するためには、一定のプロジェクト管理の専門知識がないと正確な計画や解析が難しい

3.単一視点の限界
ネットワーク工程表だけで全て管理できるわけではなく、他のプロジェクト管理ツールと併用する必要がある

メリット・デメリットを踏まえ、さまざまな工程表から適切なものを選択することが重要です。

まとめ

建設工事において、工程間の関連性を視覚的に把握できるネットワーク工程表は施工管理だけでなくコスト管理においても重要なツールです。作成に知識とコツが必要なのが難点ですが、一度作成方法を覚えてしまえば業務の効率化やマネジメント力アップにもつながります。

ドローイングソフト「EdrawMax」ならネットワーク工程表だけでなくガントチャートや電気回路図、報告書、工事告知のポスターまで幅広く作成できます。

EdrawMaxの無料体験で、ぜひ一度手軽でバラエティ豊かな作図を試してみてください。

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