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クロスSWOT分析とは?やり方・事例研究を解説

戦略立案に必要な情報を視覚的に把握し、内外の要因を包括的に評価できるクロスSWOT分析はビジネスの戦略策定において欠かせないフレームワークです。

この記事では、クロスSWOT分析の概要と手法を実際の事例を通じて解説します。ビジネス戦略をより効果的に構築するためのポイントを学びましょう。

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Part1 クロスSWOT分析の概要

クロスSWOT分析では、SWOT分析より深い分析が可能になり具体的な戦略に落とし込めます。まずはクロスSWOT分析の概要について解説します。

1.1クロスSWOT分析とは何か

クロスSWOT分析は、SWOT分析を応用した手法です。

まずSWOT分析から説明すると、「SWOT」とはStrengths(強み)・Weaknesses(弱み)・Opportunities(機会)・Threats(脅威)の頭文字を取ったものです。SWOT分析は、組織やプロジェクト、製品、個人などの内部要因と外部要因を評価するための戦略的なツールとして使用されます。

SWOT分析のイメージ

SWOT分析をさらに進め、SWOT分析で得られた複数の項目を掛け合わせて具体的な戦略を立案するためにおこなわれるのがクロスSWOT分析です。

1.2クロスSWOT分析はどのような場面で使われる?

クロスSWOT分析は、具体的に以下のような場面で利用されます。

新規事業・新商品の戦略策定 市場トレンドや競合の強みや弱みを明確にし、自社の強みを活かし競合と差別化する戦略を策定する
事業拡大 自社の強みと今後需要の拡大が予想される市場を掛け合わせた商品・サービスを立案する
リスク回避 自社の弱みと市場の脅威を掛け合わせ、リスクへの対策を立案する
問題解決 問題の原因を内的・外的要素から考え、解決策を講じる

クロスSWOT分析は経営者や開発陣にとって有用なフレームワークであり、戦略的な意思決定をサポートします。

1.3 クロスSWOT分析のメリットとデメリット

クロスSWOT分析には、以下のメリットとデメリットがあります。

【メリット】

  • 内部および外部環境の要因が包括的に評価でき、総合的な視野が得られる
  • 視覚的に要素が把握でき、適切な戦略を立てるための情報が整理される
  • 内外の要因を明確にしてリスクを洗い出すことで、リスク管理も可能になる

【デメリット】

  • 分析に必要な量の情報収集と、具体的戦略への活用が難しい
  • 挙げられる要素が主観や予測に影響される
  • 時間経過にともなう状況の変化により分析結果がそぐわなくなる

クロスSWOT分析には適切な情報収集と客観的な分析が必要ですが、視覚的に現状を把握できるため戦略立案やリスク管理への効果的な活用が可能です。

Part2 クロスSWOTの作り方

次に、クロスSWOT分析の作り方と注意点について解説します。

2.1クロスSWOTの作成手順

クロスSWOT分析の手順は以下の5ステップです。

1.テーマの設定 新規事業の立ち上げ、市場展開、競合対策など分析の対象となるテーマや課題を明確に設定する
2.SWOT分析の実施

内的な強み(Strengths)・弱み(Weaknesses)・外的な機会(Opportunities)・脅威(Threats)について書き出す

SWOT分析の実施

3.クロスSWOT分析の実施

S・W・O・Tそれぞれ複数要素を掛け合わせたアイデアを生み出す

クロスSWOT分析の実施

4.戦略の立案 クロスSWOT分析でのアイデアを基に、具体的な戦略やアクションプランを決定する
5.実施と評価 立案した戦略を実行し、定期的に効果を評価して継続的に改善を図る

2.2クロスSWOT分析と SWOT分析との違いは?

クロスSWOT分析と通常のSWOT分析の主な違いは、分析の対象となる要素の範囲です。

通常のSWOT分析では、内部要因であるStrengths(強み)とWeaknesses(弱み)、外部要因であるOpportunities(機会)とThreats(脅威)の4つの要素を評価します。

一方クロスSWOT分析は、通常のSWOT分析に加えて各要素同士の関連性や相互作用に焦点を当てるのが特徴です。複数の要素からの分析により、具体的な戦略立案が可能となります。

2.3 クロスSWOT分析の注意点とポイント

クロスSWOT分析をおこなう際には、以下のポイントに注意しましょう。

  • 信頼性があり正確で十分な量の情報を収集する
  • 偏見や主観を避け客観的に分析するために、複数の関係者やチームメンバーと協力する
  • 影響力のある要素を明確にするために、各要素の重要度も考慮する
  • 複数の要素を掛け合わせ、具体的な戦略に落とし込む
  • 環境や市場は変化するため、定期的に見直す

以上のポイントをおさえて、具体的で効果的な戦略を構築しましょう。

Part3 クロスSWOT分析の事例紹介

次に、実際に企業で活用されたクロスSWOT分析の事例について見てみましょう。

3.1 有名企業のクロスSWOT分析事例

ここではトヨタ自動車の対中戦略を例に挙げて解説します。

トヨタ自動車クロスSWOT分析(S×O)

一つ目のクロスSWOT分析は、「エコカーに搭載する電池で優位」という強み(S)と、「中国で次世代燃料電池への需要が増加」という機会(O)を掛け合わせ、「中国でエコカーの生産を活発化させる」という戦略を立案しています。

二つ目のクロスSWOT分析は、内外のデメリットに着目した戦略です。

トヨタ自動車クロスSWOT分析(W×T)

「研究開発費がライバルより少ない」という弱み(W)と、「中国との開発は技術流出や他国からの制裁のリスクがある」という脅威(T)の掛け合わせが「研究開発費を増やし、日本企業同士で協力して研究開発する」という戦略につながっています。

(各要素と戦略は北川 哲夫ほか(2022).「トヨタ自動車の対中戦略の現状と課題」. 『国際研究論叢 : 大阪国際大学紀要』36 (1), 85-98を参照)

3.2 事例から学ぶクロスSWOTの活用方法

最初の事例では、企業の強みと外部の機会を結び付け、優位性のある部品を用いた新たな市場での事業展開を目指す戦略が生まれました。

二つ目の事例では、企業の弱みと外部の脅威を組み合わせ、技術開発におけるリスク管理を図る戦略が生まれました。

両事例とも、内外の要素をクロスさせることでリスクと機会を対比させています。これにより、リスクを最小限に抑えつつ、機会を最大限に活用する戦略が導かれました。

事例から学ぶクロスSWOTの活用方法は、企業が内外の要素を組み合わせて戦略を立案する際にリスクと機会をバランスよく考慮し、効果的な戦略を構築することを示しています。

Part4 クロスSWOT分析を活用した戦略立案

最後に、クロスSWOT分析を活用した戦略立案の例について解説します。

4.1 クロスSWOTを活用した戦略立案の例

事例:小売業の新規店舗展開

メリット デメリット
内部要因

強み(S)

既存店舗のブランド力や顧客基盤がある

弱み(W)

店舗人員の不足がある

外部要因

機会(O)

新しいショッピングモールのオープンなど、成長市場への参入機会がある

脅威(T)

競合店舗の増加や地域の景気後退がある

この事例でクロスSWOT分析を活用した戦略の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。

SO戦略の例 既存のブランド力を活かし、新規ショッピングモールに出店する
WO戦略の例 新店舗では自動レジや自動化された業務システムを導入して販売員の負担を軽減する
ST戦略の例 ブランド力を活かした競合他社との差別化戦略や販促活動を展開する
WT戦略の例 店舗の運営コストが少ない売れ筋アイテムに絞った小規模店舗の割合を増やす

4.2 クロスSWOTを活用した戦略立案のコツ

クロスSWOTを効果的に活用するためには、SWOT分析から得られた情報を基に、S・W・O・Tそれぞれを掛け合わせた異なる組み合わせやアプローチを検討してみましょう。

また、複数の関係者やチームメンバーとの意見交換を通じて、多様な視点から戦略の質を向上させることが重要です。

まとめ

クロスSWOT分析は内外の環境要因に対する総合的な評価に役立つツールであり、企業は強みと機会を活かしながら弱点と脅威に対処する戦略を立案できます。

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